はじめに
私は都内にあるWEB系企業で、技術部署のプロダクトマネージャー(課長職)として働いています。
所属している会社で創業以来初の男性の育児休業取得者となり、第1子のときに1か月間ずつ2回と、第2子のときに1年間の育児休業を取得しました。いずれも夫婦揃って育休を取得する、いわゆるダブル育休です。
この記事では男性の私の育児休業について、育休を取るまでの経緯や取得中の過ごし方などについて書いていきます。
この記事で書くこと・書かないこと
書くこと
- 男性社員が育休を取るまでの社内調整の過程
- 育休中の仕事、副業、勉強のこと
- エンジニアとしての育休の使い方
夫婦揃って育休を取ってみたいと考えている旦那さんや、近々子供が生まれる予定のWEB系エンジニアの方に、とくにご参考いただける内容になるよう意識しています。
書かないこと
- 育児自体のこと
- 育休の制度のこと
育児自体や育休の制度についてはウェブ上に良質な情報がたくさんありますし、とくに制度については住んでいる地域やその年によって結構異なるようです。
正確な情報の提供や情報の鮮度を保つことが難しそうなので、この記事では必要最低限の情報だけご紹介します。
ブラックなエンジニア課長が育休を取るまで
「育休を1年も取らせてくれるなんていい会社ですね!」自分の育休の話をすると、よく言われた言葉です。
私もそうは思うのですが、以前からずっといい会社と言われるような状態だったわけではありませんでした。
はじめての育休を取る前の状況
会社のこと
従業員50名前後、創業15年くらいの会社です。以前はブラックに近い企業体質で、平均残業時間がやや長く、みなし残業制で残業代もほとんど出ない、といった感じでした。
そして創業以来、男性の育休取得者はいませんでした。
自部署のこと
そんな会社の中で、私の部署は会社のメインのシステムの開発をする、6〜7人くらいの部署でした。他の部署と比較しても業務量が多く、夜遅くになるとうちの部署の周りだけ電気が消えない。。といったことが日常になっていました。当時のメンバーにはだいぶ苦労をかけていたと思います。
当時の月間平均残業時間は全社で40時間前後、自分の部署は80時間前後、という状態でした。
自分のこと
このような部署で、私は毎月80〜120時間の残業をしていました。
おそらくもっと大変な状況の方もいらっしゃるとは思いますが、「育休を取りたい」と言い出しやすい状況かというと、決してそうではなかったと思います。
そんな折、第1子の出産予定と同時期に、その時担当していた過酷なプロジェクトが終結して運用フェーズに入っている見込みがありました。育休のことはぼんやりと考えていたので、出産予定の6ヵ月前くらいに、思い切って上司に1か月間の休暇の希望を伝えました。
「そういう時代だしね」と言いながら上司は受け入れてくれました。本心でどう思ったのかはわかりませんが、時期や期間についてこちらの希望をそのまま聞いてくれたことはとてもありがたかったです。
2回目の育休を申請したときのこと
1度目の育休の半年ほどあと、パパママ育休プラスという制度を利用してもう一度1か月間の育休を取りました。
子供を保育園に入れた最初の1か月で、このときは子供を預けている時間に会社の仕事をしていました。自宅からのリモート勤務形式で、給料は当時の月給を時給換算して、働いた時間分だけ頂いていました。
1か月限定の時短かつ自宅勤務をさせてもらったような形です。
3回目の1年間の育休を申請したときのこと
第2子ができたら長期で育休を取りたいと考えていたため、第2子の妊娠がわかった際は、安定期に入るのを待たず会社に相談をしました。
あまり早い時期だと流産のリスクも高く、他人に伝えるのを躊躇する方もいらっしゃるかと思うのですが、長期の育休を取ろうとするならばできる限り早く準備を始めた方が良いと考えていたため、私はそのようにしました。
具体的に話を進めていく過程で、最長の1年間を取りたいことを伝えたり、また会社から育休中にリモートで仕事をしてほしいと打診されたので、2回目の育休と同様、時給社員としてフルリモートで1年間勤務させてもらうことにしました。
この時は、社外の開発者(全員フルリモート)との仕事がメインになっていたので、仕事の環境の変化としては私が会社ではなく自宅から仕事をするようになったという点だけでした。
補足:助成金のこと
ちなみに補足として、男性社員が育休を取ると、会社が国や都道府県から助成金をもらえることがあります。(年度や都道府県によっていろいろあるようなので、詳細は総務や社労士の方に調べてもらうのが確実です。)
私の場合は、「出生時両立支援助成金」で60万円をいただきました。自分の懐に入るわけじゃありませんが、「1か月休んで60万円の売り上げを作った」という気分になって、長期休暇の罪悪感がいくらか和らいだという記憶があります(笑)
育休中の過ごし方
1回目(第1子誕生直後の1か月)
ミルクやオムツ替えに奮闘する。。というのが、育休を始める前のイメージでしたが、実際には想像とは違った利点がありました。
それは、出産直後のさまざまな用事を奥さんにやらせなくて済んだことです。
まず、産院からの退院が平日でした。退院準備、手続き、支払い、自宅までの車の手配など、退院当日はそれなりに忙しいです。
また、出産から14日以内に出生届を提出しなければならないのですが、提出先の役所へ平日に行く必要があります。出生届の提出のほか、児童手当の申請なども同時に行うので、これも結構時間がかかりました。真夏の時期だったので、新生児を連れていたらとても大変だったと思います。
その他にも、生後1か月くらいまで子供は基本的に外に出さない方が良いと言われているので、奥さんも家に籠らなければなりません。日用品の買い物なども含め、外出が必要な用事は基本的に私の担当でした。
旦那さんが休みを取っていない家庭はこの期間をどうやって乗り切ってるの?と不思議に思いました。
2回目(第1子の保育園入園時)
2回目の育休は、子供を保育園に入れた最初の1か月間です。保育園に入園できた場合は育休を終了して復職しなければなりませんが、私の住んでいる地域では、入園月の翌月1日に復職していれば良いというルールでした。当月末日か、翌月1日か、といった差はあると思いますが、だいたいどの地域でも1か月くらいというルールのようです。
入園後の最初の数週間から1か月くらいは、預ける時間を少しずつ増やしていく「慣らし保育期間」というものがあります。最初の週は親同伴で午前中だけ、という形でした。
2~3週間もすると預けられる時間は長くなってくるのですが、登園時の検温に引っかかってお休みする日も多くなってきます。これは園によってルールがさまざまだと思いますが、うちの園の場合は「登園時の検温で37.5度以上だと登園不可」というルールがあり、そもそも基礎体温の高い新生児なので、元気だけど登園できないということがよくありました。
また、保育園に通いはじめてから急に風邪をひくようになりました。保育園ではやはり菌が繁殖しやすいのと、月齢的に免疫力が低下する時期だったということが理由だと思います。
このような感じで、運良く保育園に預けられた日はリモートで会社の仕事をし、預けられなかった日は片方が家事、片方が看病に専念するといった体制で過ごしていました。実際に預けられた日は月の半分くらいでしたが、子供1人に対して大人2人という体制だったので、穏やかに過ごせたと思います。
3回目(第2子の1年間)
3度目の育休は1年間と長期だったので、家事はもちろん、本業のリモート勤務、副業、プログラミングスクールとさまざまなことにチャレンジしました。
家事
毎日、毎食の用意と、上の子の保育園の送り迎えは基本的に担当していました。また、妻も育休中に週2日ほど勤め先に出勤して仕事をしていたので、その間は、いわゆるワンオペ育児でした。
本業のリモート勤務
2回目の育休と同じように、リモートで本業の仕事を一部続けさせてもらいました。前回と同様、勤務時間分だけ時給で給料をいただくという形です。
しかし、この時期のリモート勤務ではうまく仕事が進められなかったと思っています。
まず、自分の時間を作ることが非常に難しかったです。新生児の都合を最優先した生活で、3時間に1回くらいの子供が寝たタイミングで仕事をするのですが、その時間が2時間続くこともあれば10分で終わってしまうこともあり、予想ができません。集中するのが難しく、生産性の低い状態でした。
また、いつどれだけ働いても良いという制度だったため、常に締め切りのプレッシャーにさらされていました。保育園のお迎えに向かう間中ずっと仕事のことを考えていて、気づいたら到着していたということも1度や2度ではありません。
プレッシャーを感じながらも生産性が上がらないので、時間を増やしてカバーするようになっていったのですが、会社からいただく給料が基準を越えて、育児休業給付金が減額された月もありました。(育休中に働きすぎると、育児休業給金が減額される仕組みになっています。1か月に25〜30時間くらいが境目でしょうか。それを超えると、会社からの給料は増えるけどその分給付金が減って、実質タダ働きということになります。)
コミュニケーションの面では、開発チームは全員社外かつフルリモートのメンバーだったので問題は少なかったのですが、リモート勤務ではない社内のメンバーとの足並みが揃いませんでした。
これは育休の課題というよりは、全体の中で一部の人間だけがリモート勤務をしていることでうまく回らない(リモート勤務に最適化されていない)という課題だったと思っています。
結果的に、仕事の成果をあまり出すことができなかったので、他のことに時間を使っておけば良かったと思っています。
プログラミングスクール
育休が始まってすぐ、オンラインのプログラミングスクールのTechAcademyを受講しました。
会社ではキャリアの初期の段階からマネジメント寄りの仕事を任されていて現場経験が少なかったため、この育休の間に、不足しているエンジニアとしての実力をつけようという狙いでした。
この、オンラインのプログラミングスクールという選択は育休中の生活に非常に合っていました。学習の進め方が「教材を進める→メンタリング(メンターに相談)」という形だったのですが、教材を進める時間は不規則ながら多くありましたし、メンタリングはオンラインなので子供の世話をしながらでも受講することができました。
また、コース終了後に応募したスクール主催のコンテストで賞をいただくことができました。 このコンテスト受賞が、錯覚資産の形成という観点において価値が高いかどうかはわかりませんが、コンテスト受賞歴というわかりやすい結果のおかげで副業の受注が増えたという事実はあります。
副業
育休中、WEB制作の事業を行なっている友人からの紹介や、先述のコンテスト受賞の結果を知った知人からの依頼という形で、WEB制作や印刷物のデザイン制作といったお仕事を個人で受けていました。
作業時間が不規則、かつ本業を優先していたため、隙間時間に個人でできる案件しか受けられませんでしたが、受注から納品まで自分1人で行う体験はなかなか勉強になったと感じています。
エンジニアにオススメしたい育休
1年間の育休を終えた今、奥さんと一緒に長期の育休を取ることは、エンジニアにとってかなり良い仕組みなのではないかと思っています。
まず、仕事を休んでいても、育児休業給付金である程度の収入がある点。育休に入る前の所得によって給付金の金額は変わりますが、最大で年間310万くらいの額が給付金という形で支給されます。一切仕事をしなくても、手取りで年間最大310万円くらいいただけます。
また育児によって取られる時間は、長時間というよりは不規則なことが多いので、個人の開発なり勉強に当てる時間はそれなりに取れるという点。
そして、副業で稼げるという点。
育休の間に会社の仕事もできますが、頂ける給料の額に上限があります。(正確には、給料がある一定額を超えたところから、育児休業給付金が減額されます)
これは、雇用保険に加入している会社からの給料によって育児休業給付金の額が計算されるという仕組みになっているので、雇用保険と関係ない個人事業主(フリーランス)としての収入は育児休業給付金の計算(減額)には関係がないそうです。これは調べてもなかなか正確な情報が見つけられなかったので、担当地区のハローワークに電話して直接教えてもらいました。
極端な話、育休で給付金をがっつりもらいつつ、フリーランスでバリバリ働けば、育休前の年収を超えるという事も出来そうです。ただし、それは制度の目的に沿った使い方ではないと思いますし、ちゃんと育児をしようと思ったらそこまで時間は取れないと思いますので、現実には難しいかと思いますが。
という事で、現場の経験が少ないままマネジメントをやることになってしまった自分にとって、育休期間中に勉強や副業ができたことはとても良かったですし、この経験が本業にも活かせそうだと思っています。
子供の生まれる予定があり、パートナーも育休を取る予定のエンジニアの方には、長期の育休をとって勉強や副業にチャレンジするのはオススメです。
つらかったこと・大変だったこと
一応大変だったことも書いておきます。育児休業給金はとても助かる制度なのですが、育休に入ってから振り込まれるまでに、私の場合3ヵ月ほど時間がかかりました。手続きが完了次第指定口座に振り込まれるので、いつ振り込まれるかの予定もわかりません。この間は無給でしたし家の生活費は全額私が負担していたので、どんどん減っていく銀行の残高を眺めながら、いつになったら振り込まれるのかとか、何か手続きが間違っていたりして振り込まれないのではないかとソワソワしていました(笑)。この手続きは自分で行うこともできるようなので、振込みまでの期間をできるだけ短くしたい方は自分で手続きするのが良いのかもしれません。
また、育児以外にも副業や勉強をやっていたことで、育休に入る前より睡眠時間が減りました。楽しんではいたのですが、結構体に負担はかかっていたかもしれません。
なお、外出は基本的に上の子の保育園の送り迎えのときだけ、という生活を1年続けたので、その間体脂肪率はぐんぐん上がりました(笑)。復職直後は、ちょっと長距離歩いただけで筋肉痛になった記憶があります。
おわりに
少し古い2016年のデータですが、男性の育休取得者の割合は3.16%とのことです。さらにその半数以上は取得日数が5日間未満とのことで、1年以上の育休を取った人は、全体の0.03%(3300人に1人)くらいしかいないようです。
周りでも育休を取る男性が増えてきたという実感はあるものの、数か月以上取っているという話はあまり聞きません。希少性という意味で、自分の持つ経験や情報にも発信する価値があるのではないかと思いこの記事を書きました。
育休を取りたいと考えている男性やエンジニアのみなさまの参考になれば嬉しいです。Twitterのリンクもブログ下部にも掲載していますので、フォローもぜひよろしくお願いできればと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。